物理と数学! ここどうなってんの~?

工学系の著者が気ままに書きます.大学初級の物理と数学で,初学者が「ここどうなってんの~?」と思うところを中心に取り上げていきます.改めて学び直したい人もどうぞ.

モータの位置決め制御をしよう 2. 制御の意義

こんにちは!

まろです.

 

さて,前回はモーターのモデルとして

a\ddot{\theta} + b\dot{\theta} + c\theta = T(t)

という式を考えようという話をしました.

過去の記事(この記事など)で減衰振動を扱いましたが,今回考える式と左辺が同じ形をしています.

つまり,モーターにねじりバネと空気抵抗を生む羽と慣性を持つフライホイールが付いていると考えることができます.

 

減衰振動のときには,初期条件を与えればこの方程式(右辺が0の場合)が解けることを示しましたね.

今後の記事で書く予定ですが,右辺が0でない場合の方程式も解くことができます.

 

一意に解けるならば,\thetaが目標の値に収束するようなTを求められるはずですね.

しかし,時刻の関数として(例えばt^2 + at + 3bとか)の形で求められたとしても,初期条件が少し変われば係数を変えなければいけません.

これは何を意味するかと言うと,モーターの初期位置を全くずれないように設定した位置に合わせなければならないということです.

もしくは,モーターの初期位置を正確に計測して係数を合わせて,プログラムを書き換えなければならないということです.

製品を使うときにいちいちこんなことはできないですよね.

 

つまり「制御」に求められることは,

「任意の状態から別の任意の状態に収束できること」

です.

どんな初期位置にあっても,所望の位置に回転させるべきなのです.

 

どうすればいいかと考えると,まず思いつくのは,

「目標位置を行き過ぎたら戻って,戻りすぎたらまた進む」

という繰り返しで,だんだん目標位置に近づくという方法です.

これなら初期状態に依存しそうにないですよね.

いちいちプログラムを書き換えなくても,自動的にコンピュータにさせられそうです.

 

この直観的な方法を数式で考えるところを次回にお話しします.

キーワードは「PD制御」です.

 

ではまた!

 

モータの位置決め制御をしよう 1.モータ制御とは

こんにちは!

 

これまでは力学をやってきましたが,気分転換に制御の話をします.

モータの位置決めと聞いてピンと来るでしょうか?

なぜそういう制御が必要なのかというところから説明します.

 

身近な例を出すと,デジタルカメラのピント調節があります.

あれは,レンズの位置をモータで動かすことでピントを合わせています.

思った位置にピタッと行かないと,写真が撮れないですよね.

位置決め制御は他にもいろんなところで使われているのです.

 

つぎに位置決めの概念です.

まずモータというのは,電流を流すとトルクが発生します.

トルクとは,軸を回転させる力だと思ってください(とりあえず).

で,我々はコンピュータを使って希望のトルクTをモータに出させることができます.

つまり,モータ軸の回転角\theta(t)を用いて

a\ddot{\theta} + b\dot{\theta} + c\theta = T(t)

という運動方程式に対して,T(t)を自由に設定できるのです.

ここで,Tを上手く設計すれば\theta好きな角度に収束させることができそうです.

制御の世界ではTを入力と言います.

 

では,具体的にTをどうすればいいのか?

それを考えるのが制御工学です.

 

制御工学とは,現実の物理系を表す微分方程式の解を所望の値に収束させるために必要な入力を決定する学問です.

複雑な系になると簡単には決められないため,奥が深いです.

 

ここでは最も簡単な線形常微分方程式で表されるモータ系を考えていきます.

次回から具体的な話に入ります.

イメージは分かったでしょうか?

 

では次回をお楽しみに!

運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 臨界減衰編)

こんにちは!

いよいよバネ・マス・ダンパ系の最後の解「臨界減衰」です.

「臨界」というのは境目を意味していて,減衰振動と過減衰の中間ということです.

特性方程式が重解をもつということからも,非常に特殊なケースだと言えます.

 

さて,一般解を求めましょう.

特性方程式を解いて...あれ?

重解のときは,基本解が2つ出てこない.

どうしたらいいだろう?

 

実はこの場合の e^{-\alpha t}でない方の基本解はt e^{-\alpha t}であることが知られています.

本当か確かめてみてください.

自分でやってみることが重要です.

 

確かめたとして,次に行きますね.

基本解が分かったので,一般解はそれらの一次結合である

(C_1 + C_2 t)e^{-\alpha t}

となります.

 

初期条件をx_0, \ v_0とすると,

x(t) = (x_0 + (v_0 + \alpha x_0)t)e^{-\alpha t}

です.

 

実は,臨界減衰が日常に取り入れられている場面があります.

それは「ドア」です.

ドアの上に,腕のようなものが付いているのを見たことがあるでしょう.

あそこに,バネとダンパが入っています.

ドアを閉めるときには,できるだけ早く,かつできるだけ静かに閉まってほしいですよね.

この2つは相反する要求ですが,臨界減衰には収束が早くかつ閉まる前に原点を通り過ぎない(ある条件下で)という性質があります.

減衰振動では,原点を何度も行き来する運動となりますし,

過減衰では,e^{\alpha t}の項が収束を遅らせます.

その中間の「最適な」解が臨界減衰なのです.

工学では,このように相反する指標の下で最も良い解を見つける「最適化問題」が多く扱われます.

 

ドアに限らず,モーターの位置決めの制御でも,制御入力によって2階の運動方程式を臨界減衰の式にチューニングすることができます.

これについては今度紹介します.

 

ドアの話に戻ります.

初期位置が正で,初期速度が負の場合を考えましょう.

これは,開いているドアを手で突いて閉めようとする状況に対応します.

初期速度がv_0+\alpha x_0 \gt  0なら,ドアは原点を通らずに原点に収束します.

v_0が小さいということは,ある程度静かに閉めようとした場合です.

このとき,ドアは「バン!」という音を立てずに閉まります.

 

では,v_0が大きい,つまり思い切り閉めようとした場合はどうでしょう?

ある時刻においてx(t) \lt 0となります.

つまり「バン!」と閉まります.

ですから,想定されていない強さで閉めると,臨界減衰といえども耐えられません.

設計者はドアの重さや閉める力,風の強さなどを考慮してバネとダンパを設計するのです.

 

ドアは静かに閉めましょう.

 

次回からはモータの位置決め制御について話します.

ではまた!

 

 

 

 

運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 過減衰編)

こんにちは!

まろです.

 

今日は過減衰の解を考えましょう.

過減衰とは,バネ・マス・ダンパ系で周期運動をしないものを言います.

水あめの中でバネを振動させるイメージです.

 

今日考えるのは一般の解のパラメータを

 \omega_0 \lt \alpha

とした場合です.

つまり,減衰項が大きい場合です.

 

減衰振動の場合とは異なり,解の指数関数の肩が実数となります.

つまり,

 x(t) = C_1 \mathrm{e}^{(-\alpha + \omega' )t} + C_2 \mathrm{e}^{(-\alpha - \omega' )t} 

ここで,\omega' = \sqrt{\alpha^2 - \omega_0^2}です.

 

形を整えると,

 x(t) = \mathrm{e}^{-\alpha t}( C_1 \mathrm{e}^{\omega' t} + C_2 \mathrm{e}^{- \omega' t})

となります.

 

これは,指数関数で押さえられながら sinhcosh が減衰していくイメージです.

形から分かるように sin や cos が入っていないので,周期的に振動するような運動は生じません.

振動したくても抵抗が大きすぎて自由に動けないような状況です.

 

今日はここまでです.

次回は,工学的にも重要な臨界減衰を考えましょう.

では!

運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 減衰振動編)

久しぶりの更新となりました.

まろです.

 

前回の記事ではバネ・マス・ダンパ系の運動方程式の一般解を求めました.

今日は①の \omega_0 \gt \alphaの場合について考えましょう.

この場合一般解は,

 x(t) = C_1 \mathrm{e}^{(-\alpha +\omega'\mathrm{i})t} +C_2 \mathrm{e}^{(-\alpha -\omega'\mathrm{i})t}

です.

ここで

 \omega' =\sqrt{\omega_0^2 - \alpha^2}(実数)

です.

減衰がないときと比べて,抵抗\alphaの影響の分振動数が小さくなっているのが分かります.

 

 ここまでだと運動のイメージがあまりわかない人がいるかもしれません.

それは虚数が入っているからでしょう.

もちろん実際に粒子の位置が複素数で表されることなどありえないので,虚数は含まれるべきではありません.

ではどうするか?

 

数学を物理にするために,現実にありうる初期条件を入れてみましょう.

つまり,初期位置と初期速度を

  x(0) = x_0, \ \dot{x}(0) = v_0(実数)

などとしてみましょう.

 

これを一般解に代入して計算すると, C_1, \ C_2複素数であることが分かります.

これらの虚数と指数の肩の虚数が上手く打ち消しあって,実数の範囲の解が得られるのです.

自分でやってみてください.

 

さっきやったのは機械的なやり方ですが,そうではなく解が実数になるということを前提として一般解を変形すると,もっと早く運動の様子を知ることができます.

どうやるかと言うと,オイラーの公式を使います.

オイラーの公式はよく知っているように,実数\thetaに対して

\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta} = \cos\theta + \mathrm{i}\sin\theta

ですね.

 

これを用いて一般解を変形すると,

 x(t) = \mathrm{e}^{-\alpha t} (C_3 \sin\omega' t + C_4\cos\omega' t)

 C_3, \ C_4は実数)

とできます.

 

これは,指数的に振幅が減衰しながら振動する運動を表しています.

この形の方が初期条件から未知定数を求めるのがも簡単ですね.

 

グラフがどんな形になるかは,Google検索で

"y = exp(-x)*cos(10*x)"

で検索してみてください.

 

今日はここまでです.

次回は過減衰の場合を考えてみましょう.

では!

 

 

 

運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 一般解編)

こんにちは!

まろです.

前回から扱っている運動方程式を解くのは,やや長丁場になりそうです.

しかし,

m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=0m,c \gt 0

という形の方程式は,機械システムをはじめとして,電気システム,流体システムなどさまざまなところで出てくるので,とても重要な式です.

機械システムでは「ばね・マス・ダンパ系」,電気系では「RLC回路」などです.

ポイントは復元力と減衰力が入っていることで,これによってシステムが安定に(発散せずに)動作するのです.

 

この方程式を,計算の便宜上

\ddot{x}+2\alpha\dot{x}+\omega _0^2 x=0

と変形しておきます.

 \omega _0は,減衰項のない場合の角振動数です.

 

線形常微分方程式の一般論によると,解の基底(基本解の組)は

 \mathrm{e}^{\lambda t}

です.ここで \lambda複素数です.

 つまり,

 x(t)=C_1 \mathrm{e}^{\lambda t} + C_2 \mathrm{e}^{-\lambda t}

となります.

線形微分方程式なので,一般解の第1項と第2項はそれぞれ元の方程式を満たします.

それぞれの基本解を代入して, \lambdaに関する2次方程式

 \lambda ^2 +2\alpha\lambda + \omega_0^2=0

が得られます.

この解は簡単に分かりますね.

\lambda=-\alpha \pm \sqrt{ \alpha ^2 - \omega _0^2}

です.

冒頭でわざわざ変形した理由が分かると思います.

(ただ表記を簡単にするためです.)

 

ここで場合分けが生じますね.

①:\omega _0\gt \alpha :複素解

②:\omega _0= \alpha :重解

③:\omega _0\lt \alpha :実数解

 

もう想像がつくと思いますが,①は振動解で,②と③は非振動解になります.

次回からはそれぞれの場合について解を出していきましょう.

 

いつも紹介している下の本は,振動を詳しく扱っていないので,

 

この下の本がおすすめです.

1質点だけでなく,多体系や連続体についても一通り書かれています.

ではまた!

 

運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 導入編)

こんにちは!

まろです.

最近寒いですね.

 

今回は線形ばね弾性力粘性抵抗力が作用する質点を考えましょう.

粘っこい流体中でばねに繋がれた質点が運動する状況です.

もしくは,ダンパという装置とばねが繋がれていると考えてもいいです.

 

運動方程式は前回までのものを組み合わせて,

m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=0

です.

この方程式には,語るべきことがたくさんあるので,何日かに分けて書いていきますね.

 

先にネタばらしをすると,係数によって質点は3通りの運動をします.

「減衰振動(狭義)」,「臨界減衰」,「過減衰」の3つです.

減衰振動は振動の振幅がどんどん小さくなっていく振動運動で,比較的サラサラした流体中の運動のイメージです.

過減衰は振動せずにネバネバした流体中で止まってしまうような運動です.

水中と水あめの中の違いのようなものです.

で,臨界減衰はそれらの中間の運動で,振動ではありませんが,最も速やかに運動が止まります.

係数が異なれば微分方程式の解の振る舞いが変わるので,このように運動が変化するのです.

 

方程式を解くときに自然と場合分けの必要性に気が付くはずです.

少し難しいですが,次回から1つずつ頑張って解を求めていきましょう!

今日はここまでです.

 

いつも紹介している下の本は,振動を詳しく扱っていないので,

 

この下の本がおすすめです.

1質点だけでなく,多体系や連続体についても一通り書かれています.

 ではまた!

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