運動方程式を解いてみよう!(線形ばね弾性力と粘性抵抗力 臨界減衰編)
こんにちは!
いよいよバネ・マス・ダンパ系の最後の解「臨界減衰」です.
「臨界」というのは境目を意味していて,減衰振動と過減衰の中間ということです.
特性方程式が重解をもつということからも,非常に特殊なケースだと言えます.
さて,一般解を求めましょう.
特性方程式を解いて...あれ?
重解のときは,基本解が2つ出てこない.
どうしたらいいだろう?
実はこの場合のでない方の基本解はであることが知られています.
本当か確かめてみてください.
自分でやってみることが重要です.
確かめたとして,次に行きますね.
基本解が分かったので,一般解はそれらの一次結合である
となります.
初期条件をとすると,
です.
実は,臨界減衰が日常に取り入れられている場面があります.
それは「ドア」です.
ドアの上に,腕のようなものが付いているのを見たことがあるでしょう.
あそこに,バネとダンパが入っています.
ドアを閉めるときには,できるだけ早く,かつできるだけ静かに閉まってほしいですよね.
この2つは相反する要求ですが,臨界減衰には収束が早くかつ閉まる前に原点を通り過ぎない(ある条件下で)という性質があります.
減衰振動では,原点を何度も行き来する運動となりますし,
過減衰では,の項が収束を遅らせます.
その中間の「最適な」解が臨界減衰なのです.
工学では,このように相反する指標の下で最も良い解を見つける「最適化問題」が多く扱われます.
ドアに限らず,モーターの位置決めの制御でも,制御入力によって2階の運動方程式を臨界減衰の式にチューニングすることができます.
これについては今度紹介します.
ドアの話に戻ります.
初期位置が正で,初期速度が負の場合を考えましょう.
これは,開いているドアを手で突いて閉めようとする状況に対応します.
初期速度がなら,ドアは原点を通らずに原点に収束します.
が小さいということは,ある程度静かに閉めようとした場合です.
このとき,ドアは「バン!」という音を立てずに閉まります.
では,が大きい,つまり思い切り閉めようとした場合はどうでしょう?
ある時刻においてとなります.
つまり「バン!」と閉まります.
ですから,想定されていない強さで閉めると,臨界減衰といえども耐えられません.
設計者はドアの重さや閉める力,風の強さなどを考慮してバネとダンパを設計するのです.
ドアは静かに閉めましょう.
次回からはモータの位置決め制御について話します.
ではまた!